グレたちは2ヶ月ぶりに、エミーの家に帰ってきました。
あたり一面真っ白な雪におおわれて、まほうのじゅうたんが着地したところも、スポッと雪の中に埋まってしまいました。
ネコは忍者のように身軽に歩くことができるのですが、さすがにこの大雪だと
玄関にたどり着くのも大変でした。
やっと雪から脱出した4匹が部屋に入ると、エミーはさっそく暖炉の焚き木に火をつけました。
エミー「ああ、久しぶりに帰って来たわ。やっぱり我が家はいいわねえ!!」
マスター「たった2ヶ月なのに、なんだか1年もたったような気がするぜ。」
カノジョ「手紙が来ているわ、天国のメイとクロスケからよ!!」
グレ「なんて書いてあるんだろう。カノジョ、早く読んで!!」
カノジョ「ええ、読むわよ。」
{メイとクロスケの手紙}
「みんな、久しぶりだね。キャッツアイでの活躍、天国から見守っていたよ。惜しくも命を落としたキャッツアイのネコたちも、いっしょに天国から応援していたんだ。キャッツアイから来たネコたちは、これでやっと安心して、天国での生活ができると喜んでいました。
ところで、君たちに行ってもらいたいところがあるので、この手紙を書きました。
天国も地上のように広いところで、ネコの天国、イヌの天国、鳥の天国と分かれていて、先日はじめてウサギの天国へ行ってみたんだ。ウサギの天国には、耳の長い、白いウサギや茶色いウサギ、耳の短いウサギなど、いろんなウサギがいたんだけど、その中にとても幼い子ウサギたちだけのグループがあったのです。みんな生まれてすぐとか、お母さんのおなかの中にいるときに、殺されてしまったウサギたちだそうです。子ウサギたちは名前もつけられていなかった。
天国へ来ればだれでも幸せに暮らすことはできるけど、地上に生を受けて、ピンク色の朝焼けを見ることもなく、海に沈む真っ赤な夕日を見ることもなく、天国へ召されて来た子ウサギたちは、みんな同じことを言うんだ。
『私たちは天国に来られたので、地上で生きられなかったことは、悲しくありません。しかし、私たちの親は、みんな嘆き悲しみながら、生きているのです。どうか親たちを助けてあげてください。』
そこで、手がかりはないかと、ウサギ天国の中を、うろうろしていたら、その子ウサギたちといっしょに、天国に召されて来た大人のウサギもいて、その大人のウサギたちの話を聞くことができたのです。
その子ウサギと大人のウサギたちはバルバランというウサギの国からやってきたウサギでした。
ウサギたちの話によると、バルバランという国は真っ白で、長い耳を持つウサギたちの国で、そこの大様は特にその長い耳には、誇りを持っていました。
ある日、国の中で、ウイルスに侵されて、耳が短くなる病気が流行ったのです。
大様はその病気がまんえんすることを恐れ、病気にかかったウサギたちを山奥の収容所に隔離したのです。
そこに強制収用されたウサギたちは、過酷な労働を課せられ、体力が弱ったウサギや高齢になって、仕事ができないウサギは次々に殺されました。そして生まれたばかりの赤ちゃんも殺されてしまったのです。
なんとそのあかちゃんたちは、全員耳が長かったのです。
そのウイルスは一時的なもので、他に伝染する病気ではなかったのです。
赤ちゃんを殺された母親たちは、生きた心地もしないまま、隔離された収容所で暮らしています。そこは地獄のようなところで、今でも毎日殺戮が繰り返されているのです。
ぼくたちは天国の住人なので地上に降りていくことは出来ません。
そこで君たちで、バルバランに行って、できれば、収容所に入れられているウサギたちを助け出してほしいのです。よろしくお願いします。
メイ・クロスケ」
カノジョが長い手紙を読み終えると、みんなからため息が漏れました。
エミー「この世に生まれてきたのに、一度もお日様の顔を見ないで、天国へ召された子ウサギたち!!」
チャピー「子ウサギのお母さんは悲しみの毎日を送っているんだわ。」
グレ「その収容所はどんなところにあるんだろう。」
マスター「なんとかして、虐待をやめさせなくては!!」
カノジョ「子ウサギたちは天国で幸せに暮らしていることを、伝えてあげましょう。」
グレたちはその夜、赤々と燃える暖炉の前で、久しぶりのエミーの手料理を味わいました。
そして暖炉の前でみんないっしょに眠りにつきました。
明日はバルバランに向けて、旅立つのです。
つづく