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お話と音楽

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エミーの旅立ちの巻き

 エミーのもとへ、マスターから手紙が届きました。
「エミー、スノー、スポット(2匹の仔猫たちの名前)、元気ですか。私はいよいよ、このアモイの酒場を閉めて、旅に出ることになりました。以前、店に来ていた客の娘のマリーが先日立ち寄ったのです。マリーは成長して、見違えるような美しい娘になっていました。ずーっと一人旅を続けているそうで、生涯旅を続けると言っていました。
エミーにも、以前話したように、私も生涯旅を続けることを目標にして、家を出たのです。そんなわけで、マリーと一緒に「風の旅」に出ることにしたのです。もう戻ることはないと思いますが、旅の途中で、家に立ち寄ることはあるかもしれません。エミー、スノー、スポットには申し訳ないと思っていますが、生涯の目標を果たしたいと思います。スノーとスポットは、お母さんを助けて、3匹で仲良く暮らしてください。

愛するエミーと息子たちへ

マスター」


エミーは覚悟はしていましたが、マスターの手紙を読むと、涙が溢れてきました。
「マスターはもう戻ってこないのだわ。きっとマリーは素敵な娘なのでしょうね。でも、風の旅に出たのだから、許してあげなくちゃ。」

スノー、スポットの2匹の息子たちも、マスターの手紙を読んで、
「父さんは、若い娘と旅に出るなんて、母さんが可哀想だ。」と憤りましたが、手紙を読んでいくうちに、マスターは風の旅に出たのだということがわかったのです。
「父さんは風の旅に出たんだ。僕たちもいつかそのときが来る。それまでに、一生懸命働いて、一人前の雄猫になれるよう努力しなくちゃ。」

3匹は、マスターがもう戻らないということがわかり、悲しみも込み上げてきましたが、「風の旅」に出ることは、猫としての最終目標であるとわかっているので、暖かく見守ることになったのです。

あくる朝、エミーは、旅の支度をして、2人の息子を呼びました。
「スノー、スポット、私も旅に出ることにしました。私は生まれてから、一度もこの土地を離れたことがないので、初めての旅は、不安もあるのですが、それ以上に、未知の世界を見たいという気持ちが大きいのです。あなたたちも、一人前に仕事ができるようになったし、2匹で助け合って、留守をしっかり守っていてください。」

スノー「母さんも、旅に出るの?僕たちは、仕事はきちんとやれるし、留守にしても大丈夫だけど、母さんのはじめての一人旅は心配だな。僕たちも、しばらく一緒について行こうか?」

エミー「ありがとう、心配してくれて。でも私の旅は風の旅ではないので、帰りたくなったら、いつでも帰ってきます。それに、天国にいるメイとクロスケが、トミーを派遣してくれたので、一人ではないのです。」

そう言って、エミーは玄関の扉を開けました。玄関の前には、羽の生えた、真っ白なトナカイが立っていたのです。

スポット「すごいなあ、羽が生えたトナカイだ!!なんて豪華な旅なんだろう。うらやましいよ。母さん、これなら心配ないから、旅をたのしんで来てください。冬になる前には帰って来てほしいけど。トミー、母さんをよろしくたのむよ。」

トミーは息子たちの方へ向かって、頭を軽く振ると、エミーを背中に乗せて、大空へ飛び立ちました。

「じゃあ、行ってきます!!」エミーもトミーの背中から、息子たちに手を振りました。

エミー「トミー、さあ出発よ。まずは、私の見たかった海へ行ってちょうだい。」

こうして、エミーとトミーのちょっと豪華な旅が始まったのです。

つづく

BGM 独りぼっち (AYAKO)
※ 三 角さんの「独りぼっち」という詩をイメージして作曲したピアノ曲です。
※「独りぼっち」の原詩はこちらで見ることができます。

イラストの説明
エミーがトミーの背中に乗ると、海へ向かって飛び立ちました
エミーがトミーの背中に乗ると、海へ向かって飛び立ちました

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