クロスケの家に滞在している3びきは、毎日大忙しです。
クロスケの指示に従い、それぞれの仕事をこなしていきました。
カノジョは、全国各地から届けられた、クルミやナッツ、アーモンド、松のみ、ヒマワリの種など、色々な木の実を入れたクッキーを焼きます。
おなかをすかせた子猫たちに食べさせるためです。
グレはするめや干した小魚、カレイの干物などを1匹分づつ袋に詰める役でした。
これも全国から送られてきたものです。クロスケに世話になった猫が全国にちらばっていて、クリスマスが近づくと、こうして毎年送ってくるのです。
ワインも大きなたるごと送られてきました。マスターはこのワインを猫の形のビンに入れる役でしたが、毒見だと言ってちょびちょびなめていましたので、毎日昼過ぎになると、よっぱらって仕事にならないのです。
バーバラさん親子も手伝いにきてくれましたし、近所の猫たちはみんなボランティアで手伝ってくれました。
みんな、参加できることを楽しんでいるのです。
そして、いよいよ庭に大きなクリスマスツリーがたてられました。
夜になるとイルミネーションがキラキラ光って、とてもきれいです。
遠くからでもよく見えるのです。
このツリーがたてられると、おなかをすかせた子猫や、年老いた猫たちが、毎日やってくるようになりました。子猫にはカノジョが焼いたクッキーとあたたかいミルクが配られました。年老いた猫にはさかなの干物セットとネコ型のびんに入ったワインが配られました。
なんてすてきなクリスマスプレゼントでしょう。
そしてここに来られない遠方の猫たちの為に、メイがトナカイのそりを用意してくれました。
羽のはえた、真っ白なトナカイでした。夜になると、そりにクッキーやさかな、ワインを乗せて、3びきは配って回りました。
いよいよクリスマスイブの日がやってきました。
夕方になると、たくさんの猫たちが、クリスマスツリーの下に集まりました。
やがてイブの音楽会がはじまりました。
聖歌隊の子猫たちが賛美歌を歌いだすと、観客の猫たちも手に手にキャンドルを持って、いっしょに歌いました。
その歌声は夜空に響きわたって、メイのいる天国にも届きました。
次に登場したカノジョはかすみそうのようなあわいドレスを着て、とてもきれいでした。
「神の身元に」というゴスペルを詩情豊かに歌い上げました。
心に染み渡るすばらしい歌でした。
グレもマスターも久しぶりにカノジョの歌を聴いて、惚れ直してしまいました。
他にもギター3人組みのフォークソングのグループや、全身の毛をオレンジ、ブルー、イエローに染めた、ファンキーなロックグループや、アカペラのコーラスグループなど、次々と登場して、観客たちは、瞬きする間もないほど、興奮しました。
夜も更けて、いよいよ終わりの時間がやってきました。
グレがごあいさつしました。
「みなさん、今日は本当に楽しいクリスマスイブでした。今日のことは、一生忘れられない思い出となるでしょう。この感激を与えてくれた、神様に感謝します。さいごにみんな一緒に歌いましょう。勝利を我らに!!」
ワーっという歓声がわきあがりました。
グレはギターを持ってツリーの下に立ちました。
マスターはハーモニカを吹き始めました。
カノジョはタンブリンを叩きながら歌いだしました。
観客たちもそれにつづきます。
歌声は次第におおきくなって、天高くのぼっていきました。
一夜明けると、小雪のちらつくホワイトクリスマスでした。
昨日の余韻にひたっているクロスケたちのところへ、1通のクリスマスカードが届きました。
「クロスケさんへ、
メリークリスマス。そちらのクリスマスはいかがですか。僕のいるジュールでは、飢えと寒さで毎日たくさんの猫たちが亡くなっています。食料とあたたかい毛布を送ってください。ポール」
クロスケの友達のポールからでした。
ポールは旅の途中でジュールに立ち寄った時にあまりに悲惨な現状を見て、帰れなくなったのです。
それからずうーとジュールで救援活動をしているのです。
3びきはありったけの食料と毛布をそりに乗せてそりに乗り込みました。
3びきをのせたトナカイのそりは夜空へ消えてゆきました。
つづく