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お話と音楽

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猫たちの願いの巻き

3匹(グレ、カノジョ、マスターの3匹ののらねこたち)を乗せたトミー(羽のはえた、真っ白いトナカイ)のそりは、その夜の明け方近くジュールの町へ到着しました。

ポール(クロスケの友達)を先頭にたくさんの猫たちが出迎えてくれました。ポールはグレの手を取って、
「来てくれてありがとう。こんなに早く着くなんて、すごいよ。」
といいました。

グレたちはさっそく病気の猫たちに毛布を配り、おなかをすかせ、特に弱っていそうな子猫から、ありったけの食料を配りました。食料はすぐに底を尽きて、もらえない猫たちが、たくさん残ってしまいました。

グレはクロスケに手紙を書きました。「食料も毛布も足りません。どんどん送ってください。」その手紙を乗せて、トナカイのトミーはクロスケのところへ戻っていきました。
「大人の猫のみなさんは、もうしばらく辛抱してください。追加の救援物資を頼みました。」
グレたちは申し訳なさそうに説明しました。

雪のちらつく寒い日なのに、みんな住む家もありません。カノジョは
「私の小さい時と同じね。」
といって、親を亡くした子猫たちを、1匹づつ抱きしめました。3匹とも、親のいないのらねこなのです。グレは言いました。
「僕たちにできる事は歌う事ぐらいしかできません。僕たちの歌を聴いてください。」

食料にありつけなかった猫たちも、みんな帰らないで、グレたちの歌を聴いてくれました。悲惨な現状を目の当たりにして、マスターのハーモニカも今日は怒りと悲しみにふるえています。カノジョが、切々と歌い上げます。
「何でこの世に戦争はあるの。神様はみんながなかよく、平和に暮らす事を望んでいるのに。罪のない子供たちを何で苦しめるの。もう終わりにしよう。こんなむなしい戦いは。」
グレもギターを弾きながら、合いの手をいれました。

猫たちは感激して、お礼に「風のトロイア」という、いつもみんながくちずさんでいる歌を歌ってくれました。空腹なのにおおきな声で、目をきらきらさせて、希望を込めて歌います。こんな悲惨な状態でもみんなあきらめていないのです。一生懸命生きていれば、きっと平和の日々がくると信じてがんばっているのです。グレたちは深い感銘をうけました。

次の朝からグレたちも労働に加わりました。農地は荒れ果てて、果樹園の樹木は根こそぎ抜かれていました。それでも猫たちは、土を掘り起こして、畑を耕していきます。3匹は慣れない仕事で手も足もまめがつぶれ、血に染まっていました。クロスケからは、トミーのそりで次々と救援物資が届けられましたが、5回目の荷物といっしょに、次のような手紙が送られてきました。
「僕たちの家の食料は底を尽きました。もうこれ以上送ることはできません。」
クロスケも全国の仲間たちも、自分たちの食料もなくなるまで、送ってくれたのです。もう、限界だと3匹は思いました。

「私たちにできる事は、あれしかないわね。」
カノジョがいうと、グレもマスターもうなずきました。
「ギャラネコポリスへいって、ショウを開こう。成功すれば、たくさんの資金ができるさ。」
ギャラネコポリスでショウをやるなんて、途方もない夢かもしれません。カノジョもメルキドの町ではスターだったし、グレも人気者の吟遊詩人でしたが、世界的には無名にひとしい知名度でした。どうやって、成功させようというのでしょう。それでも3匹は、この現状を救うためには、ギャラネコで成功を収めるしかないと思いました。3匹は家も身よりもないのら猫でしたので、失うものが何もないのです。自分たちがやる気になれば、どこへでも行く事ができました。ジュールのねこたちは、3匹がジュールへ来たときのように、みんなで、見送ってくれました。3匹はポールに「きっと成功して食料をいっぱい持って帰ってくるからね。」と約束して、ギャラネコへ向けて出発しました。

つづく

カノジョと子猫

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