グレが旅に出たあとのエミーの家でも、異変が起きていました。
エミーとマスターの子供が生まれたのです。2匹の可愛い雄猫でした。1匹は真っ白な毛色だったので、スノーと名づけました。もう1匹は白に少しだけ黒いぶちが入っていたので、スポットと名づけました。
生後2ヶ月が経ち、仔猫たちのやんちゃぶりは、日に日に激しくなり、チャピーもカノジョも子守りにかり出されました。
仔猫たちは何でも動く物を見ると、追いかけたくなるのです。野原を駆け回り、じゃれあって、取っ組み合いをしてみたり、トカゲを追いかけたり、ハチの巣を覗き込んで、ハチに鼻の頭を刺されたり、とにかく一時もじっとしていないのです。
カノジョ「可愛いとは思うけど、想像以上のやんちゃ坊主ね。」
エミー「そうなのよ。私はそろそろマナーを教えようと思っているんだけど、マスターは男の子はやんちゃなほうがいい。そのまま遊ばせろとか言って。。。」
マスター「メイの母親は、メイが生まれるとまもなく亡くなったのさ。道路を渡ろうとして車に撥ねられ、即死だったらしい。それで生後1ヶ月からオレが育てあげたのだが、調度このくらいのときから、一匹で生きるすべを教え込んだのさ。物陰に隠れて、獲物を狙う方とか、ちょろちょろ動きの早いトカゲを追いかけるときのコツとか、スノーたちにもそろそろ教えようと思っているところだ。そのためには駆け回って体力をつけておくほうがいいのさ。」
カノジョ「マスター、随分うれしそうね。マスターがこんな親バカになるとは思わなかったわ。」
チャピー「私、こんなに忙しくなるなら、とても子供なんて産めないわ。」
マスター「ええーっ!!チャピー、結婚相手がいなくちゃ子供はつくれないよ!!」
エミー「チャピー、もしかして恋猫が出来たの?」
チャピーは真っ赤になって、うなずきました。
カノジョ「本当なの、チャピー!!お相手はどんな猫?紹介してよ。」
チャピー「修行の旅の猫で、この間山にれんげそうを摘みに行った時に会ったの。真っ黒い猫なんだけど、スリムで脚が長くて、ステキなの。」
マスター「チャピー、本当かよ、ちっとも気がつかなかったなあ。まだまだ子供だと思っていたけど、もう恋をしてもおかしくない歳だよな。」
エミー「チャピー、その方をお連れしたら。一人くらい増えても皆で働けば、食べていけるわよ。」
チャピー「エミーありがとう。私たち話し合ったのだけど、彼は旅の途中で立ち寄ったので、もうすぐこの村を出ていくの。それで私もいっしょについていこうと思っています。明日にでも呼んできますので、彼に会ってください。」
カノジョ「まあ、チャピー本気なのね。おめでとう。きっとステキな彼なのでしょう。」
エミーとマスターには、可愛い仔猫が生まれたし、チャピーも恋猫を見つけて、もうすぐ旅に出るのです。カノジョはふと、一人ぼっちの自分が、とても孤独に思えました。
「メイ、私一人ぼっちね。これからどうやって生きていこうかしら。」
カノジョはいつになく弱気になって、空のお星様に話しかけてみました。
「カノジョ、元気を出して。君はとてもチャーミングだよ。旅に出てごらん。きっとステキな恋猫が見つかるよ。」
「メイったら、そんなこと言って。」
カノジョが空を見上げると、メイのお星様がキラッと微笑みました。
つづく