森の木々はすっかり紅葉して、朝は霜が下りるようになりました。遠くの山の頂は、もう真っ白です。もう少ししたら、この森も雪で覆われるでしょう。
カノジョとコウサギのハナは、冬支度を始めました。目立たない場所に、ころあいの洞穴を見つけましたので、そこに干草をいっぱい敷きつめました。今日は冬の間の食料となる、木の実を採るために、歩き回っています。
しばらく森の中を歩いていると、1匹の子ウサギが、木の枝に、輪の垂れ下がったロープを結びつけて、輪の中に顔を入れようとしているところを見つけました。
カノジョ「あの子、首を吊る気だわ!!」
ハナ「早くやめさせなきゃ!!」
2匹はその子ウサギのいる木の下に駆け寄りました。
カノジョ「ばかなことはやめなさい。命を粗末にしては、いけないわ。」
子ウサギ「死なせてください。止めないで!!生きていても苦しいばかりだわ。」
その子ウサギは、カノジョたちを見ましたが、木の枝から下りてはきません。もう一度、顔を入れようとしています。
カノジョと、ハナは夢中で木に登り、その子ウサギを引き摺り下ろそうと、格闘になりました。
子ウサギは死ぬことしか頭にないので、必死で抵抗します。カノジョたちも死なせてたまるかという気持ちですから、引っ張ったり、引っ掻いたり、かじったり、3匹とも、顔は涙と鼻水で、ぐしゃぐしゃです。
しばらく大乱闘が続きましたが、3匹とも最後は力尽きて、地面に転げ落ちました。
たいした高さではありませんでしたし、地面は草で覆われていましたので、怪我はありませんでした。
3匹はそのまま地面に仰向けになり、声を上げて泣きました。
どのくらい経ったでしょうか。あたりに夕闇が迫って、空には星が瞬き始めました。
カノジョが起き上がって、その子ウサギに言いました。
「すっかり暗くなってしまったわ。今夜は私たちの家にいらっしゃい。何か温かいものをご馳走するわ。」
ハナも「いっぱい泣いて、おなかがすいたわね。」と言って、その子ウサギを見つめました。
その子ウサギはさっきまで、死のうとしていたことがうそのように、すがすがしい顔をして笑っています。
「私、ナオミというの。よろしくね。」
ナオミ「私は入学してからずーっといじめられてきたの。みんなと少し色が違うという理由で。これは生まれつきだから、仕方ないことなのに。毎日毎日みんなでからかうの。そして最後は、お前のようなやつは、この学校にいる資格はない。出て行け。レットウセイ学校へ行ってしまえ。となじるのです。」
カノジョ「なんていうやつらなの。先生たちは叱らないの?」
ナオミ「先生も生徒たちを叱ると、その子の親たちが、キョウイクイインカイに訴えて、クビにさせられるそうで、いじめられた生徒の味方はしてくれないのです。私、こんな毎日がこれからもずーっと続くと思ったら、つらくて、つらくて、もう死んで楽になりたいと決めたのです。」
ハナ「私は人間たちに親も兄弟も殺されて、たった一人生き残ったの。私も悲しくて、悲しくて、死んでお母さんたちところに行きたいと思ったわ。でもこのカノジョと出会えて、これから楽しく生きられそうと思えてきたところなの。私たちと一緒に暮らしましょうよ。」
カノジョ「ナオミ、私も幼いころ、お母さんが死んで、一人ぼっちで生きてきたのよ。でもすばらしい仲間ができて、生きるって楽しいこともあるんだとわかったの。ナオミにもその楽しさを教えてあげたい。一緒に暮らしましょう。
それにしても、そのエリート学校の生徒たちを懲らしめなくちゃ。私にちょっといい考えがあるの。明日その対策を立てましょう。今日はおいしいものを食べて、いろんなことを話そう。」
その夜は朝が来るまで3匹は、ふかふかの干草に包まれて、ディナーを食べながら、それぞれのおいたちを語り合ったのです。
つづく